西洋服飾発達史〈〔第1〕〉古代・中世編 (1958年)本無料ダウンロード
西洋服飾発達史〈〔第1〕〉古代・中世編 (1958年)
によって 丹野 郁
以下は、西洋服飾発達史〈〔第1〕〉古代・中世編 (1958年)に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
この本は、1958年から1965年まで掛けて3冊組で出された「西洋服飾発達史」の1巻で、私が持っているのは1965年の第6刷ですが、初版は1958年に発行されたものです。著者の丹野郁氏は、1938年に東京女子高等師範学校(お茶の水女子大の前身)を卒業した後、第2次大戦後にオレゴン大とソルボンヌ大に留学して服飾史を学び、埼玉大学の教授を務め、日本風俗史学会理事・日本家政学会理事・日本服飾学会会長を務めた方です。つまり丹野氏は、戦後の日本における西洋服飾史研究の第一人者であり、その氏の若い頃の代表的著書と言えるのが本書です。上記の通り初版発行年は昭和33年ですが、昭和40年代の後半になっても幾つかの大学では教科書的に扱われていましたし、当時はまだまだ日本語で纏められた西洋服飾史の資料は少なかったこともあり、「西洋服飾史を学ぶのなら座右に置け」と言われたものです。本の具体的なサイズは、A5版のハードカバー箱入りでページ数は280頁ほど、図版はこの当時の本としてはかなり豊富ですが、全頁モノクロでカラーの写真や図版はありません。内容は、とりあえず目次を列挙しますと以下のようになっています。一衣服の起源および発達二エジプト人の服飾三西アジアの服飾四ギリシア人の服飾五ローマ人の服飾六ゲルマン民族の服飾七ビザンティン帝国時代の服飾八中世期前半('T)(五〜十世紀)の服飾九中世期前半('U)(十一、十二世紀)の服飾−ロマネスク様式時代−十中世期後半('T)(十三、十四世紀)の服飾−ゴシック様式時代−十一中世期後半('U)(十五世紀)の服飾−ルネサンス初期−中世の服飾についてはフランスが中心で、ドイツとイギリスとイタリアの服飾がオマケに付く程度ですが、これはパリ・モード全盛だった当時の日本の状況を考えれば、ある程度はやむを得ないでしょう。それよりも、ゲルマン民族の服飾に一章を割いているのが当時としては画期的でしたし、中世前半の部分では「サラセン人の歴史的背景とその服飾」として、中近東地域のイスラム教徒の衣装とそのヨーロッパへの影響を取り上げているのも、学校の教科書などでも欧米史観中心だった当時としては革新的でした。もちろん現在の視点で見れば、ケルトやノルマンなどがすっかり抜け落ちている点や、東欧圏、スラブ系各民族の服飾にも全く言及されていない点など、不備も幾つか目に付きます。しかしその程度のことは、本書の価値をいささかも毀損するものではありません。今現在、服飾史や服飾デザインを学ぶ人が読んでも、必ず何かしら得るところはある本だと思います。ついでに申しますと、現在50歳代以上の教授連は確実にこの本を読んでいるはずですから、レポートや論文のレファーで触れていたりすれば、「お、勉強しているね」と好印象を持たせられるはずです。個人的な思い入れと歴史的評価も含めて星は5つです。古書で買っても損はしないと断言できます。
0コメント